公開日:2022/11/15
介護の上位資格とされているのが、国家資格の介護福祉士です。国家試験には大きく筆記試験を実技試験の2つがありますが、制度改正にともなって、2016年度より多くの受験生は実技試験が免除となりました。ただし、条件があるので注意が必要です。今回は介護福祉士の実技試験にフォーカスして、実技試験が免除される人や条件を解説します。
冒頭でも述べたように、2022年10月現在、介護福祉士の国家試験は大きく筆記試験と実技試験の2つに分かれています。まずはそれぞれの概要を見ていきましょう。
介護福祉士の養成施設を令和8年度末までに卒業した場合、その後5年間は国家試験を受けなかったり、受けて不合格だったりしても、介護福祉士として登録可能です。
5年間のうちに国家試験に合格するほか、5年間続けて介護業務に従事していれば、その後も登録が続きます。
養成施設以外で資格取得を目指す場合、また、令和9年度以降に養成施設を卒業する場合は、筆記試験を受けなければいけません。試験科目は次のとおりです。
・人間の尊厳と自立・介護の基本
・人間関係とコミュニケーション・コミュニケーション技術
・社会の理解
・生活支援技術
・介護過程
・発達と老化の理解
・認知症の理解
・障害の理解
・こころとからだのしくみ
・医療的ケア
・総合問題
総合問題は「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」の4領域をベースとして、事例形式で出題されます。
筆記試験に合格すると、一部の受験者は実技試験を受けます。試験内容は毎年変わるものの「介護の現場で仕事ができるかどうか」が問われる内容です。
現在介護福祉士の受験資格を得るためのルートは、主に次の4つです。
・介護福祉士の養成施設を卒業
・3年以上の実務経験+実務者研修修了、または介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修を修了
・福祉系高校を卒業
・経済連携協定(EPA)
上記の中で「介護福祉士の養成施設を卒業」「3年以上の実務経験+実務者研修修了、または介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修を修了」に該当する場合は、実技試験は免除されます。
筆記試験のみ受験して合格すれば、資格取得です。一方で「福祉系高校に2008年度以前に入学して、旧カリキュラムの教育を受けて卒業した人」
「特例高校に2009年度以降入学して、必要単位を取得して卒業。その後、9か月以上の介護実務を経験したものの、介護技術講習を受けていない人」「経済連携協定(EPA)で介護技術講習を修了していない人、または、実務者研修(EPA介護福祉士候補者)を修了していない人」に該当する場合、実技試験を受けなければいけません。
自分がどのようなケースに該当するのかを確認した上で、受験の準備を進めていくことが大切です。
先で述べたように「福祉系高校を卒業」「経済連携協定(EPA)」に該当する一部の受験生は筆記試験だけでなく、実技試験も受けなければいけません。
実技試験では、実際の介護現場で考えられるシチュエーションが文章として提示され、状況に応じた介護福祉士としての対応を制限時間内に行います。
「安全・安楽」「個人の尊厳」「自立支援」という介護の3原則をベースに、とくに以下のようなポイントが評価されます。
・利用者と適切なコミュニケーションがとれているか(あいさつやアイコンタクトなど)
・利用者の健康状態を正しく把握できているか(疲労、空腹など)
・利用者へ事前に説明して、承諾を得られているか
・身だしなみを確認しているか(シャツのボタンが閉まっているかなど)
・自己決定を促すような声かけをしているか
・利用者の残存機能を活用しているか
・適切な環境整備ができているか
・安全が確保できているか
・「車いすの操作」「体位変換」「移乗」などが適切か
実技試験をクリアするためには、以下のような対策を進めておきましょう。
実技試験を受ける多くの受験生が心配することが「想定外の問題が出題されること」です。あらかじめ予測していたシチュエーションとは異なった問題が出題されると、焦ったり、戸惑ったりすることでしょう。
そのため、できるだけ多くのケースを想定して練習しておくことが大切です。何度もくり返して練習に取り組むことで、自信もついてくるはずです。
介護する上で大切なのが、相手にケガさせないことです。高齢者は急な動作への反応が鈍くなっていることがあるため、相手のペースを考えて介助を進めていきましょう。
動作前に必ず声をかけて、相手の反応や動きを見ながら、少しずつ介助を行います。
最後はすべての行ためを介助しないことです。自立支援の観点から相手の残存能力を生かせるように、介助する部分としない部分を判断しましょう。
介護福祉士の国家試験には筆記試験と実技試験の2種類があります。
ほとんどの受験者は筆記試験のみでOKですが「福祉系高校を卒業」「経済連携協定(EPA)」に該当する一部の受験生は、実技試験も一緒に受けなければいけません。自分がどのようなケースに該当するのかを確認した上で、それぞれに必要な受験対策を始めましょう。